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遺言書とは?種類・書き方・費用・注意点を徹底解説|初心者でもわかる完全ガイド

遺言書とは、自分の財産や想いを法的効力を持って次世代へ伝えるための重要な文書です。正しく作成すれば、相続トラブルを未然に防ぎ、残された家族が安心して手続きを進められるようになります。

この記事では、遺言書の基本的な役割から、自筆証書・公正証書・秘密証書という3つの種類の違い、具体的な書き方と文例、費用、保管方法まで初心者にもわかりやすく徹底解説します。また、遺言書が無効になるケースや検認手続きといった見落としがちな注意点もあわせてカバーしています。

「遺言書を作りたいけれど、何から始めればいいかわからない」という方も、この記事を読み進めるだけで必要な知識をすべて身につけることができます。ぜひ最後までご覧ください。

目次

遺言書とは?基本的な役割と法的効力をわかりやすく解説

遺言書の法的定義|民法が定める「最後の意思表示」

遺言書とは、自分の死後に財産や身分関係をどう扱うかを生前に書き記した法的文書です。民法960条以降に規定されており、単なる「希望メモ」ではなく、法律上の効力を持つ正式な意思表示として扱われます。

重要なのは、遺言書は「遺言者が亡くなった時点」で初めて効力が発生するという点です。生前に何度でも書き直すことができ、最も新しい日付の遺言書が有効とみなされます。また、遺言書の効力は民法が定める「要式行為(ようしきこうい)」――つまり、決められた形式を守って作成しなければ無効になるというルールに従います。書き方を一歩間違えると遺言書が無効となってしまうため、形式の厳守が非常に大切です。

遺言書で指定できること|財産分配だけじゃない多彩な機能

遺言書でできることは、財産の分け方を決めるだけではありません。民法が認める遺言事項は大きく以下のように分類されます。

【財産に関すること】相続分の指定、特定の財産を特定の人に渡す「遺贈(いぞう)」、相続人廃除の取り消しなど。【身分に関すること】婚姻外で生まれた子どもを法的に自分の子と認める「認知」。【相続手続きに関すること】遺言の内容を実現するために動く「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」の指定。【その他】祭祀(さいし/お墓や仏壇)を引き継ぐ人の指定、特定の相続人への「付言事項(ふげんじこう)」として感謝や想いを伝えることも可能です。

このように遺言書は、財産だけでなく家族関係や相続手続きをスムーズにする「人生最後の設計図」として機能します。特に遺言執行者を指定しておくと、相続人同士が揉めることなく手続きが進みやすくなるため、専門家からも強く推奨されています。

遺言書がない場合との違い|法定相続との比較で理解する

遺言書がない場合、財産は「法定相続(ほうていそうぞく)」のルールに従って分配されます。法定相続とは、民法が定めた相続人の範囲と割合のことで、たとえば配偶者と子ども2人がいれば「配偶者1/2・子どもそれぞれ1/4」が原則です。

下記の比較で、遺言書の有無による違いを確認してください。

遺言書あり/なしの主な違い

  • 財産の分け方:遺言書あり=遺言者の意思を優先/なし=法定割合で分配
  • 相続手続き:あり=遺言執行者が主導できる/なし=相続人全員で遺産分割協議が必要
  • トラブルリスク:あり=争いになりにくい/なし=協議が長期化・揉める可能性大
  • 内縁パートナーへの財産移転:あり=遺贈で可能/なし=原則として不可

特に「法定相続人ではない人(内縁の配偶者・お世話になった人など)に財産を残したい」「特定の子どもに事業を継がせたい」といった希望がある場合、遺言書なしでは実現できません。2024年4月に相続登記の義務化もスタートし、相続手続きをスムーズに進める重要性はさらに増しています。遺言書は「もめないための最善策」と覚えておきましょう。

遺言書の3つの種類|自筆証書・公正証書・秘密証書の違いを比較

自筆証書遺言|手軽に作れるが形式不備に要注意

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自分の手で書き、押印するだけで作成できる遺言書の形式です。費用はほぼゼロで、紙とペンさえあればいつでも作成できるため、3種類の中でもっとも手軽な方法といえます。

ただし、「手軽さ」には大きな落とし穴があります。法律が定める形式を一つでも満たさないと、遺言書が無効になってしまいます。よくある形式不備の例として、「日付が『令和7年〇月吉日』など特定できない書き方になっている」「相続財産の一部をパソコンで打ち出した(財産目録を除く本文は必ず自書が必要)」「押印を忘れた」などが挙げられます。せっかく作成した遺言書が無効になれば、残された家族が遺産分割協議をゼロからやり直すことになりかねません。

また、自筆証書遺言は作成後の保管場所にも注意が必要です。自宅で保管していると紛失・隠蔽のリスクがあります。2020年7月にスタートした「遺言書保管制度」を利用すれば、法務局が遺言書を預かってくれるため安心です。さらにこの制度を使うと、相続開始後に必要な「検認」(家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する手続き)を省略できるメリットもあります。

公正証書遺言|費用はかかるが信頼性は最高水準

公正証書遺言とは、公証人(法律の専門家である国家公務員)が遺言者の意思を確認しながら作成する遺言書です。作成には証人2名以上の立ち会いが必要で、内容は公証役場に原本が保管されます。形式不備で無効になるリスクがなく、検認手続きも不要なため、3種類の中でもっとも信頼性が高い方法です。

気になる費用(公証人手数料)は、相続財産の総額によって異なります。たとえば財産総額が1,000万円の場合は約2万3,000円、3,000万円の場合は約2万9,000円、1億円の場合は約4万3,000円が目安です(財産額が大きいほど手数料も増加)。これに加え、証人への日当や謝礼(1〜2万円程度)、行政書士・弁護士などに原案作成を依頼する場合の報酬(3〜10万円程度)がかかります。費用だけを見ると高く感じるかもしれませんが、遺言書の無効リスクをゼロに近づけられる安心感は大きく、資産を多く持つ方や家族関係が複雑な方には特に推奨されます。

証人の要件として、相続人・受遺者(遺産を受け取る人)およびその配偶者や直系血族、未成年者などは証人になれません。友人や知人に依頼するか、公証役場に紹介してもらうことも可能です。

秘密証書遺言|内容を秘密にできる一方で活用は少数派

秘密証書遺言とは、遺言書の内容を誰にも知られたくない場合に利用できる形式です。遺言者が遺言書を封筒に入れて封をし、公証役場で証人2名とともに「この封書が自分の遺言書である」と申述することで成立します。公証人が関与するのは封書の存在の確認だけで、中身は見ません。そのため、内容の秘密を保ちながらも「この遺言書は確かに自分が作ったもの」と公的に証明できるのが特徴です。

ただし、実務では秘密証書遺言を選ぶ人はごく少数です。理由は明確で、「内容の形式チェックは自己責任のため、無効になるリスクは自筆証書遺言と変わらない」「それでいて公正証書遺言と同様に証人2名と公証役場への出向が必要」「検認手続きも省略できない」と、手間とリスクの両方を抱えてしまうからです。秘密証書遺言を選ぶメリットは「内容の秘密保持」に限られるため、特別な事情がない限り、自筆証書遺言か公正証書遺言を選ぶのが現実的です。

3種類の比較まとめ|あなたに合った遺言書はどれ?

3種類の遺言書の特徴を整理すると、以下のように比較できます。

【自筆証書遺言】作成費用:ほぼ無料/証人:不要/形式不備リスク:高い/検認:原則必要(法務局保管制度を使えば不要)/保管:自分で管理または法務局

【公正証書遺言】作成費用:2万円〜(財産額による)/証人:2名以上必要/形式不備リスク:ほぼなし/検認:不要/保管:公証役場(原本)

【秘密証書遺言】作成費用:1万1,000円(公証人手数料)+証人費用/証人:2名以上必要/形式不備リスク:高い/検認:必要/保管:自分で管理

選び方の目安としては、「費用を抑えたい・財産が比較的シンプル」なら自筆証書遺言(法務局保管制度の活用を推奨)、「確実性を最優先にしたい・家族関係が複雑・財産額が大きい」なら公正証書遺言が向いています。秘密証書遺言は、内容を絶対に秘密にしたいという強い希望がある場合の選択肢として覚えておけば十分です。どの形式を選ぶべきか迷ったときは、行政書士や弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

【文例付き】自筆証書遺言書の正しい書き方と作成手順

自筆証書遺言が有効になる4つの必須要件

自筆証書遺言とは、遺言者が自分の手で書く遺言書のことです。費用をかけず手軽に作れる反面、法律で定められた要件を一つでも満たしていないと「遺言書 無効」と判断されてしまいます。まずは4つの必須要件をしっかり押さえましょう。

  1. 【全文自書】本文のすべてを自分の手で書くことが必要です。パソコンで作成したり、他人に代筆させたりすると無効になります。読みやすさより「自分の手で書いた」という事実が重要です。
  2. 【日付】「令和7年5月1日」のように年月日を具体的に記載してください。「2025年初夏」や「5月吉日」といった曖昧な日付は無効の原因になります。作成した正確な日付を必ず入れましょう。
  3. 【署名】戸籍上の氏名を自書します。通称やペンネームでも本人と特定できれば有効とされる場合がありますが、トラブル防止のために必ず本名でフルネームを書くことを強くおすすめします。
  4. 【押印】認印でも法律上は有効ですが、実印を使うと遺言書の信頼性が高まります。シャチハタ(スタンプ式)は避けるのが無難です。この4要件が自筆証書遺言書の書き方における最大のポイントです。

財産目録はパソコン作成OK!ただし条件あり

2019年の民法改正により、財産目録(財産の一覧リスト)についてはパソコンでの作成が認められるようになりました。これは自筆証書遺言 書き方の大きな変更点です。預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を目録として添付することも可能になり、利便性が格段に向上しました。

ただし、パソコン作成の財産目録を使う場合には必ず守らなければならない条件があります。それは「目録の各ページに署名・押印すること」です。両面印刷の場合は表裏それぞれのページに署名・押印が必要です。この条件を忘れると目録部分が無効となり、遺言全体の効力にも影響する可能性があります。

本文(誰に何を相続させるかの指示部分)は引き続き全文手書きが必須です。「本文=手書き、目録=パソコン可(ただし各ページに署名・押印)」と覚えておくと整理しやすいでしょう。

ケース別・すぐ使える文例集(預貯金・不動産・遺贈寄付)

ここでは遺言書 作成 文例として、よくある3つのケースのひな形を紹介します。実際に書く際の参考にしてください。

【預貯金を特定の人に相続させる場合】

「私は、〇〇銀行△△支店(普通預金、口座番号XXXXXXX)の預貯金を、長男 山田一郎(昭和XX年X月X日生)に相続させる。」

銀行名・支店名・口座番号まで具体的に記載するのがポイントです。「すべての預貯金」とまとめて書くことも可能ですが、特定口座は明記した方が手続きがスムーズです。

【不動産を相続させる場合】

「私は、下記の不動産を、妻 山田花子(昭和XX年X月X日生)に相続させる。

所在:東京都〇〇区△△一丁目

地番:XX番XX

家屋番号:XX番XX

種類:居宅 構造:木造〇階建」

不動産は登記事項証明書を参照しながら正確に記載します。2024年4月から相続登記が義務化されたため、不動産の特定は以前にも増して重要です。

【遺贈寄付(NPO等への寄付)の場合】

「私は、〇〇銀行△△支店(普通預金、口座番号XXXXXXX)の預貯金を、特定非営利活動法人〇〇(所在地:〇〇)に遺贈する。」

「相続させる」ではなく「遺贈する」という表現を使います。遺贈先の団体が遺贈に対応しているか事前確認も忘れずに。

文例の最後には必ず「令和〇年〇月〇日 住所:〇〇 遺言者:山田太郎 ㊞」と日付・署名・押印を添えてください。

公正証書遺言の作成方法・費用・必要書類を詳しく解説

公正証書遺言の作成フロー:事前相談から完成まで4つのステップ

公正証書遺言は「公証役場」という国の機関で、公証人(法律の専門家)が作成を手伝ってくれる遺言書です。手間はかかりますが、最も信頼性が高く無効になるリスクが低いのが最大のメリット。作成の流れを時系列で押さえておきましょう。

ステップ①:公証役場への事前相談

まずは最寄りの公証役場に電話または来所して相談します。「どんな内容を遺言書に書きたいか」を伝えると、担当の公証人が必要書類や手数料の目安を教えてくれます。事前相談は無料なので気軽に利用しましょう。

ステップ②:必要書類の準備

相談後、公証人から指示された書類を収集します。主な必要書類は次のとおりです。遺言者本人の印鑑証明書・実印、相続人(受け取る人)の戸籍謄本、不動産がある場合は固定資産評価証明書・登記事項証明書、預貯金・有価証券がある場合はその残高証明書など。書類の準備が整ったら、公証人と遺言書の文案を打ち合わせます。

ステップ③:公証人との文案打ち合わせ

遺言の内容が確定したら、公証人が正式な遺言書の文案を作成します。メールや郵便でやり取りできる公証役場も多く、何度か修正を重ねて内容を固めていきます。この段階で「誰に何をどれだけ渡すか」を明確に伝えることが重要です。

ステップ④:作成当日(署名・押印)

いよいよ本番。遺言者本人が公証役場へ出向き、証人2名の立ち会いのもとで公証人が遺言書を読み上げます。内容に間違いがなければ、遺言者・証人・公証人の全員が署名・押印して完成です。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。

公証人手数料の目安と専門家報酬の相場

公正証書遺言の費用は「公証人手数料」と「専門家報酬」の2つで構成されます。それぞれの相場をしっかり確認しておきましょう。

公証人手数料(遺産総額別の目安)

公証人手数料は「遺言書に記載する財産の総額」によって国が定めた基準で決まります。

財産の価額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円

財産を受け取る人(受遺者)が複数いる場合は、それぞれの取得分ごとに手数料を計算して合算します。また、遺言書の枚数に応じた加算(1枚250円)や正本・謄本の交付手数料も別途かかります。

行政書士・弁護士などの専門家報酬

自分で準備が難しい場合は、行政書士・司法書士・弁護士などに依頼するのが一般的です。相場は遺産総額にもよりますが、行政書士で5万〜15万円程度、弁護士で10万〜30万円程度が目安です。複雑な相続関係や不動産が複数ある場合は高くなる傾向があります。専門家に依頼すると書類収集から文案作成まで一括でサポートしてもらえるため、初めての方には特におすすめです。

証人2名の要件と「不適格者」に注意

公正証書遺言の作成には、必ず「証人2名」の立ち会いが必要です。証人は遺言書が正しく作成されたことを確認する役割を担います。しかし、誰でも証人になれるわけではありません。法律上「証人になれない人(不適格者)」が明確に定められています。

証人になれない人(民法974条)

  • 未成年者
  • 推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続する権利がある人)
  • 受遺者(遺言で財産を受け取ることになっている人)とその配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人

たとえば「子どもに全財産を渡す」という遺言書を作る場合、その子ども自身は証人にはなれません。知人や友人、または専門家(行政書士・司法書士・弁護士)に依頼するのが現実的です。専門家に遺言書作成を依頼すると、証人の手配もセットでしてくれるケースがほとんどです。

不適格者が証人として立ち会った遺言書は遺言書が無効になるリスクがあります。「誰に頼めばいいかわからない」という場合は、公証役場でも紹介してもらえることがあるので遠慮なく相談しましょう。証人への謝礼は1人あたり5,000円〜1万円程度が目安です。

遺言書の保管方法|法務局の自筆証書遺言書保管制度を活用しよう

法務局の自筆証書遺言書保管制度とは?2020年7月からスタート

自筆証書遺言書保管制度とは、法務局(遺言書保管所)が自筆証書遺言を原本で預かり、データとして管理してくれる国の公的サービスです。2020年7月10日にスタートし、多くの方が活用しています。

これまで自筆証書遺言は「自宅の引き出しに保管」「金庫に入れておく」といった方法が主流でしたが、紛失・偽造・隠蔽のリスクが常につきまといました。この制度を利用することで、そうした不安をまるごと解消できます。

また、本制度の最大のメリットのひとつが「検認(けんにん)不要」になる点です。検認とは、相続が発生した後に家庭裁判所で遺言書の状態を確認する手続きのこと。通常の自筆証書遺言には必須の手続きですが、法務局に保管された遺言書はこの手間が省けるため、相続人の負担が大幅に軽減されます。

保管申請の手続き|本人出頭・必要書類・手数料3,900円

保管申請の大きな特徴は「本人が必ず法務局に出頭しなければならない」点です。代理人による申請は認められていないため、遺言者本人が指定の遺言書保管所へ足を運ぶ必要があります。事前に法務局のウェブサイトから予約をしてから来所するとスムーズです。

【必要書類の主な一覧】

  • 自筆証書遺言(法務省が定める様式・サイズに準拠したもの)
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付き)
  • 住民票の写し(発行から3か月以内)
  • 申請書(保管所の窓口でも入手可能)

手数料は1通あたり3,900円と、公正証書遺言と比べて非常にリーズナブルです。公正証書遺言では財産額に応じた公証人手数料が数万円〜十数万円かかることを考えると、コストを抑えながら安全に保管できる点は大きな魅力といえます。

遺言書の内容に不備があると受け付けてもらえない場合があるため、提出前に行政書士や弁護士などの専門家に確認してもらうと安心です。

相続発生後の流れ|遺言書情報証明書の取得と相続人への通知

遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者(遺言で財産をもらう人)は「遺言書情報証明書」を法務局に請求することで、保管されている遺言書の内容を確認できます。この証明書は、不動産の相続登記や金融機関での手続きにそのまま利用できるため、非常に便利です。

さらに、この制度には「関係遺族への通知」という仕組みも備わっています。相続人のうち誰か一人が遺言書情報証明書を請求すると、法務局が他の相続人全員に対して「遺言書が保管されていますよ」と通知を送ってくれます。これにより、一部の相続人が遺言書の存在を独り占めするといったトラブルを防ぐことができます。

なお、遺言書が法務局に保管されているかどうかは「遺言書保管事実証明書」を請求することで確認できます。被相続人(亡くなった方)の死亡後であれば、相続人・受遺者・遺言執行者などが請求可能です。

2024年4月からは相続登記の義務化もスタートしており、遺言書の存在をスムーズに活用できるこの保管制度の重要性はますます高まっています。自筆証書遺言を作成するなら、ぜひ法務局への保管申請とセットで検討してみてください。

遺言書が無効になる5つのケースと防止策

形式不備による無効:日付漏れ・代筆・ワープロ使用に要注意

自筆証書遺言では、民法が定める形式要件をひとつでも満たしていないと、遺言書全体が無効になってしまいます。最も多いのが「日付の漏れや不備」です。「○○年吉日」のような曖昧な書き方は日付として認められず、無効と判断されたケースがあります。必ず「2025年1月15日」のように年月日を具体的に記載してください。

次に多いのが「代筆」による無効です。自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を手書きする必要があります(財産目録を除く)。家族に頼んで書いてもらったり、パソコンで本文を作成した場合は無効です。また、複数枚にわたる場合に契印(割印)がなく、内容の改ざんが疑われるケースも問題になります。

【防止策】書き終えたら「日付・氏名・押印・全文自筆」の4点をチェックリストで確認しましょう。不安な場合は法務局の遺言書保管制度を利用すると、形式チェックを受けられるため安心です。

遺言能力の欠如:認知症等による無効リスクと診断書の重要性

遺言書は、作成した時点で「遺言能力」(=遺言の内容を理解し、判断できる意思能力)がなければ無効になります。特に問題になるのが認知症の進行です。遺言者が亡くなった後に相続人が「あの時点では判断能力がなかった」と主張し、遺言書の有効性を争う訴訟は年々増加しています。

認知症と診断されていても、「軽度」であれば遺言能力が認められた判例もあります。しかし重度の場合は無効と判断されるリスクが高く、せっかく作成した遺言書が争いの火種になりかねません。

【防止策】遺言書を作成する際は、かかりつけ医に「意思能力に問題がない」旨の診断書を発行してもらい、遺言書と一緒に保管しておくことを強くおすすめします。公正証書遺言であれば、公証人が本人の意思確認を行うため、遺言能力の証明として有力な証拠にもなります。早めの作成が最大の対策です。

遺留分の侵害:紛争リスクと遺留分を考慮した遺言書作成のコツ

遺言書は基本的に遺言者の意思を最大限に尊重しますが、「遺留分(いりゅうぶん)」という制度には注意が必要です。遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・親)に対して法律上保障された最低限の取り分のことです。

たとえば「全財産を内縁の妻に渡す」という遺言書を作成した場合、子どもは遺留分侵害額請求権を行使して、法律で定められた割合の財産を請求できます。遺言書自体が無効になるわけではありませんが、相続後に深刻な家族間トラブルに発展するケースが後を絶ちません。

【防止策・作成のコツ】遺言書を作成する前に、各相続人の遺留分(相続財産の1/4〜1/2が目安)を計算し、それを下回らないよう配慮した内容にすることが重要です。どうしても特定の人に多く譲りたい場合は、「付言事項(ふげんじこう)」として遺言書内にその理由や思いを添えることで、他の相続人の感情的な反発を和らげる効果が期待できます。専門家(行政書士・弁護士)に相談しながら、遺留分を踏まえた遺言書を作成しましょう。

その他の無効ケース:共同遺言・内容の不明確さ・強迫・詐欺

上記3つ以外にも、遺言書が無効になるケースがあります。

まず「共同遺言」です。夫婦が仲良く一枚の紙に一緒に遺言を書くケースがありますが、民法では共同遺言は禁止されており、無効となります。夫婦それぞれが別々に作成する必要があります。

また、「財産の特定が不十分」な場合も紛争の原因になります。「自宅の土地を長男に」とだけ書いても、複数の不動産を所有している場合はどの土地か判断できず、遺言の執行が困難になります。不動産は登記簿上の地番・家屋番号まで、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで明記しましょう。

さらに、脅迫や詐欺によって作成させられた遺言書は取り消すことができます。

【防止策まとめ】遺言書の無効リスクを下げる最善策は、公正証書遺言の形式を選ぶことです。公証人が関与するため形式不備や意思確認の問題がクリアされ、遺言書 無効のリスクを大幅に軽減できます。

遺言書の検認手続きと相続開始後の流れ

家庭裁判所での検認申立て:必要書類・費用・期間

遺言書の「検認(けんにん)」とは、相続人全員の立ち会いのもと家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、偽造・変造を防ぐための公的な手続きです。自筆証書遺言(法務局保管制度を利用していないもの)と秘密証書遺言は、相続開始後に必ずこの検認を受けなければなりません。

申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立人は相続人(または代理人)で、相続の開始を知った日から「遅滞なく」申立てを行う義務があります。封がされている遺言書は、開封せずにそのまま持参してください。裁判所の許可なく開封すると5万円以下の過料が科される場合があります。

【必要書類の主な一覧】

  • 申立書(裁判所の書式を使用)
  • 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書の原本

費用は収入印紙800円と郵便切手代(裁判所ごとに異なるが概ね1,000円前後)のみで、非常に低コストです。申立てから検認期日の通知まで通常1〜2か月程度かかるため、相続手続き全体のスケジュールを逆算して早めに動くことが大切です。

検認済証明書の取得と相続手続きへの活用

検認が完了すると、遺言書に「検認済」の証明文が付された「検認済証明書」を取得できます。取得費用は遺言書1通につき収入印紙150円と、ごくわずかです。

この検認済証明書は、預貯金の払い戻し・不動産の名義変更(相続登記)・証券口座の承継など、あらゆる相続手続きで必要とされます。2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記申請を行わないと10万円以下の過料が科される可能性があります。遺言書がある場合でも検認済証明書を添付して法務局へ申請する流れは変わらないため、早期取得が不可欠です。

なお、公正証書遺言は公証役場に原本が保管されており、法的効力が既に証明されているため検認は不要です。また、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合も検認が不要となり、手続きの大幅な簡略化が図れます。このことも、保管制度利用の大きなメリットのひとつです。

遺言執行者の役割と選任が必要なケース

「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を持つ人のことです。相続人や第三者(弁護士・司法書士など専門家)を遺言書で指定できるほか、指定がない場合は家庭裁判所に選任を申立てることも可能です。

遺言執行者の選任が法律上「必須」とされるのは次のようなケースです。

  • 相続廃除(はいじょ)または廃除の取消し:特定の相続人の相続権を剥奪する手続きで、遺言執行者が家庭裁判所に申立てを行います。
  • 婚外子の認知:遺言による認知は、遺言執行者が市区町村役場に届出を行わなければ効力が生じません。

これら以外のケース(不動産の名義変更や預貯金の解約など)でも、遺言執行者がいると手続きがスムーズに進みます。民法改正(2019年施行)により遺言執行者の権限が明確化され、相続人への通知義務や財産目録の交付義務なども定められました。複雑な相続が予想される場合は、遺言書の作成段階で信頼できる専門家を遺言執行者として指定しておくことを強くおすすめします。

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