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相続放棄とは?手続きの流れ・期限・費用・注意点を弁護士監修でわかりやすく解説

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産や負債をすべて引き継がない意思表示をする法的手続きです。借金や税金の滞納など、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合に有効な選択肢となります。ただし、一度申請すると原則として取り消せないうえ、手続きには3ヶ月という期限があるため、正確な知識を持って判断することが重要です。

この記事では、相続放棄の基本的な意味から、手続きの流れ・必要書類・費用・注意点まで、弁護士監修のもとわかりやすく解説します。「相続放棄すべきか迷っている」「手続きをどう進めればいいかわからない」という方に向けて、2025年最新の情報をもとに網羅的にまとめました。

相続の判断を誤ると、思わぬ負債を抱えるリスクがあります。まずは相続放棄の仕組みをしっかり理解することが、失敗しないための第一歩です。ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の状況に合った選択の参考にしてください。

目次

相続放棄とは?基本的な意味と3つの相続方法を解説

相続放棄の法的定義|「最初から相続人でなかった」とみなされる

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産を受け継ぐ権利をすべて手放すことをいいます。法律(民法939条)では「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定められています。

つまり、単に「もらわない」という意思表示ではなく、法律上「最初から相続人ではなかった」という状態になるのが大きなポイントです。これにより、プラスの財産(不動産・預金など)はもちろん、マイナスの財産(借金・ローン・保証債務など)も一切引き継がなくて済みます。

ただし、相続放棄は家庭裁判所への「申述(しんじゅつ=裁判所に書類を提出して申し込むこと)」が必要であり、口頭や書面で家族に伝えるだけでは法的な効力は生じません。また、一度受理されると原則として撤回できないため、慎重な判断が求められます。

3つの相続方法の違いを比較|単純承認・限定承認・相続放棄

相続が発生した際、相続人には大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれの違いを正しく理解することが、最適な判断への第一歩です。

【単純承認】プラスの財産もマイナスの財産(借金など)もすべて引き継ぐ方法です。何も手続きをしなければ、原則として3ヶ月(熟慮期間)が経過した時点で単純承認したとみなされます(民法921条)。財産が明らかにプラスの場合に適しています。

【限定承認】受け取ったプラスの財産の範囲内でのみ借金を返済するという条件付きで相続する方法です。財産と借金の額が不明確なときに有効ですが、相続人全員で共同申述する必要があり、手続きが複雑なため利用されるケースは少ない傾向があります。

【相続放棄】プラス・マイナスを含む一切の財産を受け取らない方法です。借金が多い場合や、相続に関わりたくない事情がある場合に選ばれます。家庭裁判所への申述が必要で、相続を知った日から原則3ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。

3つの選択肢は、財産状況・家族関係・今後の生活設計を踏まえて総合的に検討することが重要です。

「相続放棄」と「遺産放棄(事実上の放棄)」は別物!注意すべき違い

よくある誤解として、「相続放棄」と「遺産放棄(事実上の放棄)」を混同してしまうケースがあります。この2つは似ているようで、法律上まったく別のものです。

遺産放棄とは、遺産分割協議の場で「自分は財産をもらわなくていい」と申し出ることを指します。家族間での取り決めに過ぎず、裁判所への手続きは一切不要です。しかし、これはあくまで「財産の取り分をゼロにした」だけであり、法律上は相続人のままです。そのため、被相続人の借金が後から発覚した場合、債権者(お金を貸している側)から返済を求められる可能性があります。

一方、正式な相続放棄(家庭裁判所への申述)を行えば、法律上「相続人ではなかった」とみなされるため、借金の支払い義務も生じません。

「兄弟で話し合って、私は何ももらわないと決めた」というケースでも、正式な相続放棄をしていなければ、後日思わぬ負債トラブルに巻き込まれるリスクがあります。財産を受け取らないつもりであれば、必ず家庭裁判所を通じた正式な手続きを検討しましょう。

相続放棄のメリット・デメリットを徹底比較

相続放棄の3つのメリット

相続放棄の最大のメリットは、被相続人(亡くなった方)が抱えていた借金や連帯保証債務を一切引き継がずに済む点です。たとえば親が消費者金融から500万円を借りていた場合でも、相続放棄をすれば子どもに返済義務は生じません。「まさか親にそんな借金があったとは…」という事態でも、きちんと手続きを踏めば自分の生活を守ることができます。

2つ目のメリットは、遺産分割協議(相続人全員で話し合って財産を分ける手続き)に参加しなくてよい点です。相続人同士の関係が複雑だったり、疎遠な親族と顔を合わせたくない場合に、精神的な負担を大きく減らせます。

3つ目は、相続放棄が「単独で手続きできる」点です。他の相続人の同意は一切不要で、自分だけの判断と手続きで完結します。家庭裁判所に申述書(しんじゅつしょ=相続放棄を申し込む書類)を提出するだけでよく、他の相続人に気を遣う必要がありません。

相続放棄の3つのデメリット

デメリットの1つ目は、プラスの財産も一切受け取れなくなることです。相続放棄は「全部か無か」の選択であり、預貯金や不動産だけ受け取って借金は拒否する、という都合のいい使い方はできません(民法938条・939条)。財産よりも借金が多いケースでは問題ありませんが、「実は不動産の評価額が高かった」と後から気づいても取り返しがつきません。

2つ目は、相続放棄の撤回が原則として認められないことです。一度家庭裁判所に申述が受理されると、後悔しても元に戻すことは基本的に不可能です(民法919条)。詐欺や脅迫などの例外的なケースを除き、「やっぱりやめたい」は通じないため、事前の財産調査が非常に重要になります。

3つ目は、自分が相続放棄をすると、その分の相続権が他の相続人へ移る点です。たとえば子ども全員が相続放棄をすると、次は被相続人の親・兄弟姉妹へと相続権が移行します。知らない間に親族に借金の返済義務が生じてしまうケースもあるため、家族や親族への事前連絡が欠かせません。

相続放棄と限定承認、どちらを選ぶべきか

限定承認(げんていしょうにん)とは、プラスの財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ方法です。「財産が負債を上回っていれば受け取り、下回っていれば支払わない」という、いわば「損をしない相続」です。一見万能に見えますが、相続人全員の合意が必要・手続きが複雑・費用と時間がかかるというデメリットがあります。

判断基準は次のように整理できます。

【相続放棄が向いているケース】

  • 借金や保証債務がプラス財産を明らかに上回っている
  • 財産の詳細調査が難しく、リスクを取りたくない
  • 遺産分割や親族間トラブルに関わりたくない

【限定承認が向いているケース】

  • 手放したくない不動産や家業があるが、負債の規模が不明
  • 相続人全員が協力できる関係にある
  • 財産と負債のバランスが微妙で損得が読めない

具体例で考えると、「親の財産:預金100万円、借金800万円」なら相続放棄一択です。一方「自宅(評価額2,000万円)があるが、負債がいくらあるか不明」なら限定承認の検討余地があります。迷った場合は相続放棄の期限(3ヶ月)内に弁護士や司法書士へ相談することを強くおすすめします。

相続放棄の手続きの流れ|5つのステップで解説

STEP1:相続財産の調査(プラス・マイナス財産の洗い出し)

相続放棄の手続きを始める前に、まず「本当に放棄すべきかどうか」を判断するための財産調査が欠かせません。相続財産には、預貯金・不動産・株式などの「プラスの財産」だけでなく、借金・ローン・保証債務などの「マイナスの財産(負債)」も含まれます。

調査方法としては、預貯金は通帳や金融機関への問い合わせ、不動産は法務局で登記事項証明書を取得、借金については信用情報機関(CIC・JICCなど)への照会が有効です。故人の郵便物や確定申告書なども重要な手がかりになります。

この調査は「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」という期限(熟慮期間)の中で行う必要があります。財産の全容が見えない場合でも、期限が迫っているなら早めに弁護士や司法書士へ相談することをおすすめします。

STEP2:必要書類の収集

相続放棄の申述(しんじゅつ=裁判所に書類を出して申し込むこと)には、いくつかの書類が必要です。主な必要書類は以下のとおりです。

【全員共通】①相続放棄申述書(裁判所のWebサイトからダウンロード可)、②被相続人の住民票除票または戸籍附票、③申述人自身の戸籍謄本。

【続柄によって追加が必要なもの】子が放棄する場合は被相続人の死亡記載のある戸籍謄本、親・兄弟姉妹が放棄する場合はさらに先順位者が相続放棄したことを示す書類なども求められます。

戸籍謄本は本籍地の市区町村窓口またはマイナンバーカードを使ったコンビニ交付でも取得可能です。収集にかかる費用は書類1通あたり数百円程度ですが、枚数が多い場合は合計で数千円になることもあります。

STEP3:相続放棄申述書の作成

必要書類が揃ったら、相続放棄申述書を作成します。申述書は裁判所の公式サイト(裁判所.go.jp)から書式を無料でダウンロードでき、A4用紙1〜2枚程度のシンプルな書類です。

記入項目は「申述人の氏名・住所・被相続人との続柄」「被相続人の氏名・本籍・最後の住所」「相続放棄の理由(任意記載)」などです。理由欄は「債務超過のため」「生活が安定しているため」など簡潔な記載で問題ありません。法律的に厳密な文章を書く必要はなく、事実をシンプルに記載すれば大丈夫です。

申述書に貼付する収入印紙は1人あたり800円です。また、裁判所からの書類郵送のために郵便切手(金額は裁判所によって異なりますが、概ね1,000円前後)も同封します。

STEP4:家庭裁判所への申述と照会書への回答

申述書と必要書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。提出方法は「窓口への直接持参」または「郵送」のどちらでも構いません。近年は郵送申請を活用する方も増えています。

申述が受け付けられると、裁判所から「照会書(回答書)」が郵送されてきます。これは「本当に相続放棄の意思があるか」「3ヶ月の期限内かどうか」などを確認するための書類です。内容は比較的シンプルな質問形式で、記入して裁判所へ返送するだけで完了します。回答期限は通常1〜2週間程度に設定されていることが多いため、届いたらなるべく早めに対応しましょう。

このステップで裁判所へ出頭する必要は原則なく、書類のやり取りだけで手続きが進む点は多くの方にとって安心材料です(民法938条)。

STEP5:相続放棄申述受理通知書の受領と受理証明書の取得

照会書への回答後、問題がなければ裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が郵送されてきます。これが届いた時点で、相続放棄は法的に正式に認められたことになります(民法939条)。放棄した相続人は、はじめから相続人ではなかったものとみなされます。

ただし、受理通知書は「1通のみ発行」で再発行ができません。別途、債権者や金融機関などに相続放棄を証明する際には「相続放棄申述受理証明書」が必要になります。この証明書は家庭裁判所に申請することで取得でき、費用は1通150円です。必要に応じて複数枚取得しておくと、後の手続きがスムーズです。

申述から受理通知書が届くまでの期間は、おおむね1〜2週間程度が目安です。受理通知書を受け取ったら大切に保管し、証明書の取得も忘れずに行いましょう。

相続放棄の期限は3ヶ月!熟慮期間と期限延長の方法

3ヶ月の期限はいつから始まる?「起算点」を正確に理解しよう

相続放棄の期限は、民法915条により「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内と定められています。一見シンプルに見えますが、この「知った時」がいつなのかを正確に把握しておくことが非常に重要です。

ここでいう「知った時」とは、単に「被相続人(亡くなった方)が死亡した日」ではありません。①被相続人が亡くなったこと、②自分がその相続人になったこと、この2つを知った日が起算点(カウントダウンのスタート日)となります。

たとえば、疎遠だった父親が亡くなったことを1ヶ月後に別の親族から知らされた場合、3ヶ月のカウントはその知らされた日からスタートします。被相続人の死亡日からではないため、「もう手遅れかも」と諦める前に、まず正確な起算点を確認しましょう。

3ヶ月を過ぎてしまっても相続放棄できるケースがある

「3ヶ月の期限が過ぎてしまった…」と感じていても、あきらめる必要はないケースがあります。最高裁判所は、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、もしくは通常認識できたときから3ヶ月を起算すべきとする判例(最判昭和59年4月27日)を示しており、特別な事情がある場合は期限後でも相続放棄が認められることがあります。

具体的に認められやすいケースとしては、以下のような状況が挙げられます。

  • 被相続人に財産も借金もないと信じていたが、その後に多額の借金が発覚した場合
  • 相続人全員が既に放棄したと誤解していた場合
  • 被相続人と長年疎遠で、死亡の事実自体を長期間知らなかった場合

ただし、これらはあくまで「例外的な救済措置」です。期限後の相続放棄は家庭裁判所の判断次第であり、認められない場合もあります。3ヶ月 相続放棄の期限を過ぎてしまった場合は、できるだけ早く弁護士に相談することを強くおすすめします。

熟慮期間の伸長(延長)申立て|手続き方法と認められる条件

「3ヶ月では判断できない」という場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長(延長)」を申し立てることができます(民法915条1項ただし書き)。これは相続放棄をするかどうか判断する時間を、裁判所の許可を得てさらに延ばしてもらう手続きです。

【申立て先】被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

【申立て費用】収入印紙800円+郵便切手(裁判所によって異なる)

【必要書類】申立書、被相続人の死亡を確認できる書類(戸籍謄本など)、申立人の戸籍謄本

申立てで伸長が認められる条件としては、「相続財産の調査に時間がかかっている」「遠方に財産・負債がある」「相続人自身が病気や多忙で対応できない」といった、やむを得ない事情が必要です。

重要なのは、必ず3ヶ月の期限が切れる前に申し立てることです。期限を過ぎてからの伸長申立ては原則として認められません。「まだ時間があるから大丈夫」と油断せず、早めに手続きを進めましょう。伸長後の期間は裁判所が個別に判断しますが、一般的には3ヶ月程度の延長が認められるケースが多いです。

相続放棄に必要な書類と費用の目安

続柄別・必要書類一覧

相続放棄の手続きに必要な書類は、申述人(相続放棄をする人)と被相続人(亡くなった方)の関係によって異なります。まずは全員共通で必要な書類を押さえておきましょう。

【全員共通の必要書類】

  • 相続放棄申述書(裁判所の書式を使用)
  • 被相続人の住民票除票(亡くなった方の最後の住所を証明する書類)
  • 申述人自身の戸籍謄本

これに加えて、続柄ごとに以下の書類が必要になります。

【配偶者・子どもが申述する場合】

  • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本)

【親・祖父母などの直系尊属が申述する場合】

  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 先順位の相続人(子・孫など)が全員相続放棄していることを証明する書類(相続放棄申述受理通知書など)

【兄弟姉妹・甥姪が申述する場合】

  • 上記に加え、被相続人の親が死亡していることを証明する戸籍謄本も必要です。

戸籍謄本は「本籍地のある市区町村役場」でしか取得できないため、遠方の場合は郵送請求を活用しましょう。マイナンバーカードがあればコンビニ交付できるケースもあります。書類の収集には1〜2週間かかることもあるため、3ヶ月の期限を意識して早めに動くことが大切です。

自分で手続きする場合の費用の内訳

相続放棄の手続きは、弁護士や司法書士に頼まず自分で行うことも十分可能です。その場合の費用の内訳は以下のとおりです。

  • 収入印紙:800円(申述書に貼付。相続人1人につき800円)
  • 連絡用郵便切手:裁判所ごとに異なりますが、おおむね500〜1,000円程度
  • 戸籍謄本の取得費用:1通450〜750円×枚数分
  • 住民票除票:1通300円程度

合計すると、シンプルなケース(配偶者や子が申述する場合)では3,000〜5,000円程度で手続きできます。被相続人の戸籍を複数遡る必要がある場合は、戸籍謄本の枚数が増えるため7,000〜10,000円ほどになることもあります。

費用は決して高くありませんが、書類の不備があると家庭裁判所から補正(追加提出)を求められ、時間がかかります。期限(自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内)が迫っている場合は注意が必要です。

専門家に依頼する場合の費用相場と選び方

書類の収集や申述書の作成に不安がある場合や、期限が迫っている場合は、専門家への依頼を検討しましょう。依頼先には主に「司法書士」と「弁護士」の2択があります。

【司法書士に依頼する場合】

費用の目安:3〜5万円程度

書類の収集・申述書の作成・裁判所への提出を代行してもらえます。ただし、司法書士は「書類作成の代理」が業務範囲のため、相続人間でトラブルが起きている場合や交渉が必要な場面では対応できません。

【弁護士に依頼する場合】

費用の目安:5〜10万円程度

手続きの代行に加え、債権者からの請求への対応や遺産をめぐるトラブルの交渉まで一括して任せられます。借金の額が大きい・相続人間で揉めているといった複雑なケースでは弁護士への相談が安心です。

【選び方のポイント】

  • 単純な手続きのみ → 費用を抑えられる司法書士
  • トラブルあり・交渉が必要 → 弁護士
  • 初回相談料が無料かどうかも確認を(多くの事務所で30分〜1時間無料相談を実施)

相続放棄の必要書類と費用は、続柄や状況によって変わります。まずは自分のケースを整理したうえで、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄で失敗しないための注意点7選

遺産を少しでも使うと「単純承認」とみなされ相続放棄できなくなる

相続放棄を検討している方がやりがちな失敗の筆頭が、「遺産に手をつけてしまうこと」です。民法921条では、相続財産を処分・消費した場合、相続を全部承認したものとみなす「法定単純承認(ほうてい たんじゅんしょうにん)」が成立すると規定されています。

具体的には、被相続人(亡くなった方)の預金口座からお金を引き出して使う、自宅の家具や家電を売却する、故人の借金を遺産で返済するといった行為が該当します。「葬儀費用くらいなら大丈夫だろう」と思って口座を動かしてしまうケースが非常に多いため、十分な注意が必要です。

遺産に手をつける前に、まず相続放棄を選ぶかどうかを弁護士や司法書士に相談するようにしましょう。判断がつかない間は、財産に一切触れないことが鉄則です。

3ヶ月の期限を過ぎると原則として相続放棄できなくなる

相続放棄には、相続の開始を知ったときから原則3ヶ月以内という期限(民法915条・熟慮期間)があります。この期限を過ぎると、自動的に相続を承認したとみなされ、借金も含めてすべての遺産を引き継ぐことになります。

ただし「3ヶ月を過ぎた=絶対に無理」ではありません。最高裁の判例では、「相続財産が実質的にゼロに近いと信じていた合理的な理由がある場合」など、特別な事情があれば期限後でも相続放棄が認められることがあります。あきらめずに弁護士へ相談することをおすすめします。

また、3ヶ月以内でも時間的な余裕がないと感じたら、家庭裁判所に期間の延長申請を行うことが可能です。早めに動くほど選択肢が広がります。

相続放棄すると次の順位の相続人に相続権が移る—事前連絡が必須

相続放棄は自分だけの問題ではありません。あなたが放棄すると、相続権は次の順位の相続人へと自動的に移ります(民法939条)。たとえば子ども全員が放棄すると、被相続人の親や兄弟姉妹へ相続権が移り、場合によっては甥・姪にまで影響が及ぶことがあります。

事前連絡なしに相続放棄を進めると、突然「あなたに多額の借金が相続された」と知らされた親族が大きなトラブルに発展するケースも珍しくありません。相続放棄を決める際は、必ず次の順位に当たる親族へ事前に相談・連絡をしておきましょう。

連絡の際には、相続放棄の理由(主に借金などのマイナス財産)を丁寧に説明し、相手方も放棄するかどうか一緒に検討できる時間的余裕を与えることが、家族関係を守るうえで大切なポイントです。

相続放棄後も「管理義務」が残る場合がある(2023年民法改正に注意)

「相続放棄すればすべて終わり」と思っている方は要注意です。2023年(令和5年)4月施行の民法改正により、相続放棄をした人の管理義務のルールが明確化されました(改正民法940条)。

改正後は、「相続放棄の時点で相続財産を現に占有(実際に管理・使用)していた場合」に限り、次の相続人や相続財産清算人が管理を引き継げるまで、自己の財産と同一の注意をもって財産を保存する義務が残るとされました。改正前と比べ、義務の範囲が限定・明確化されたと言えます。

具体的には、被相続人と同居していた相続人が放棄した後も、実家の建物や土地を誰かに引き渡すまでの間は一定の管理が求められます。「放棄したから放置してよい」は法律上許されませんので注意してください。

相続放棄の撤回は原則できない—よく考えてから申述する

家庭裁判所に相続放棄の申述(しんじゅつ=裁判所に書類を提出して申し込むこと)が受理された後は、原則として撤回することができません(民法919条)。「やっぱり放棄しなければよかった」と後悔しても、基本的には取り消しが認められないのです。

例外として、詐欺・強迫によって相続放棄をさせられた場合などは取り消しが認められることがありますが、こうしたケースは非常にまれです。申述前に必ず財産・負債の調査を十分に行い、後悔のない判断をしてください。

限定承認という選択肢も検討する—相続放棄との違いを理解する

プラスの財産がマイナスの財産(借金)を上回る可能性があるときは、限定承認(げんていしょうにん)も選択肢に入れましょう。限定承認とは、「引き継いだプラスの財産の範囲内でのみ借金を返す」という制度です。相続放棄のように財産をすべて手放す必要がなく、プラスが残れば手元に残せます。

ただし限定承認は相続人全員で共同して行う必要があり、手続きも相続放棄より複雑で費用もかかりやすい点がデメリットです。財産の内訳が不透明な場合や、不動産など特定の資産を残したい場合に適しています。どちらが有利かは財産状況によって異なるため、弁護士に相談して判断することをおすすめします。

必要書類の不備・申述先の間違いで手続きが遅れるケースがある

相続放棄の申述先は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。自分の住所地の裁判所に提出してしまうミスが意外と多いため注意しましょう。

必要書類は申述人と被相続人の関係性によって異なります。基本的には「相続放棄申述書」「被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本」「申述人の戸籍謄本」などが必要で、代襲相続や兄弟姉妹が申述する場合はさらに追加書類が求められます。書類の不備があると補正(修正)を求められ、3ヶ月の期限ギリギリでは間に合わなくなるリスクもあります。余裕をもって書類を準備し、不安な場合は専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。

相続放棄に関するよくある質問(FAQ)

相続放棄の撤回・取り消しはできますか?

結論から言うと、相続放棄の撤回は原則としてできません。民法919条1項により、一度家庭裁判所に申述(しんじゅつ=裁判所に書類を出して申し込むこと)して受理された相続放棄は、原則として撤回が禁止されています。

ただし、「取り消し」は限られた条件のもとで認められる場合があります。具体的には、①詐欺や脅迫によって相続放棄をさせられた場合、②判断能力が著しく不十分な状態で手続きをした場合などが該当します(民法919条2項)。取り消しを求める場合は、家庭裁判所へ「相続の承認・放棄の取消申述」を行う必要があります。

「やっぱり相続したい」という単純な気持ちの変化では撤回も取り消しもできないため、相続放棄の申述前に、財産・負債の状況を十分に調査しておくことが非常に重要です。迷っている場合は、3ヶ月の熟慮期間中に弁護士や司法書士へ相談することを強くおすすめします。

相続放棄しても生命保険金・遺族年金は受け取れますか?

はい、生命保険金と遺族年金は、相続放棄をしても受け取ることができます

生命保険金は、受取人が指定されている場合、「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」として扱われます。つまり、受取人が相続放棄をしていても、保険金を受け取る権利は失われません。ただし、受取人が「相続人」と指定されている場合でも、最高裁の判例により受取人固有の権利として保護されています。

遺族年金(国民年金・厚生年金の遺族給付)も同様に、社会保障制度上の給付であり相続財産には該当しないため、相続放棄の影響を受けません。

一方で注意が必要なのが「死亡退職金」です。支給規程によっては相続財産とみなされるケースもあり、受け取ると「相続財産の処分」とみなされて相続放棄が無効になるリスクがあります。受け取る前に必ず専門家へ確認しましょう。

借金があるかわからない場合、どうやって調べればいいですか?

「故人に借金があるかどうかわからない」というケースは非常によくあります。そのまま放置して3ヶ月の相続放棄の期限を過ぎてしまうと、借金を含めたすべての財産を引き継ぐことになるため、早めの調査が必要です。

主な調査方法は以下のとおりです。

  1. 信用情報機関への照会:CIC・JICC・KSCの3機関に開示請求を行うと、故人名義のローンやクレジットカードの残債を確認できます。手数料は各機関1,000円前後です。
  2. 郵便物・通帳・書類の確認:督促状・消費者金融の明細・通帳の引き落とし履歴などから債務の存在が判明することがあります。
  3. 弁護士・司法書士への相談:専門家が代理で調査を進めてくれるため、見落としのリスクを大幅に減らせます。

調査の結果、負債が財産を明らかに上回る場合は相続放棄を検討、財産と負債が不明確な場合は「限定承認(財産の範囲内でのみ負債を引き受ける方法)」も選択肢になります。3ヶ月以内に判断が難しければ、家庭裁判所に熟慮期間の延長申請(民法915条1項)を行うことも可能です。焦らず、確実な情報収集を優先しましょう。

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